FORM -first order reliability method- 近似的に公差解析を行う方法 ① 導入 FORMって何?
公差解析の方法の一つFORM (First Order Reliability Method)について記載します。
FORMは公差解析なのですが,使う数学が機械学習の最急降下法に似ています。
また,FORMについては日本語の記事をほとんど見つけられなかったので,自分の勉強を兼ねてまとめておきます。間違いがあればガンガン指摘してください。
公差って何?
我々の身の回りのもの,例えば定規でもパソコンでもスマートフォンでもなんでも,出来上がったものを測ってみると設計値から少しだけズレて,ばらつきがでます。
このばらつきのことを公差といい,図1のように正規分布がよく書かれます。
例えば,設計値が15mmとすると,公差を含めた書き方はです。
設計図にこう書くことで,0.5mmのばらつきは許容しますよ〜ということを実際に作る人にわかるようにします。
ばらつきをどこまで無くすのかで作成物の値段が変わってくる(加工精度にお金がかかる)ので,設計者はばらつきをどこまで広げていいのか考えます。
それでも,カメラのレンズのようなズレをほとんど許さないようなものは,厳しい公差を決めて値段を上げます。
では,どのようにして公差を決めるのでしょうか?
公差解析
公差を決める手段として,公差解析というものがあります。
最も悪くなる場合の積み重ねを考えることや,分散の加法性から平方二乗和を取る方法などが一般的によく知られています(例:ここやここ)
評価対象が寸法公差のみを考える場合にはこれらの手法は有効ですが,カメラのレンズの公差が照射される光にどの程度影響を及ぼすのかを評価する場合にはあまり有効ではありません。
複数のレンズの公差の積み重ねによって,最終的な光学性能は決定されるため,寸法とはあまり関係がありません。
そのため,商品として売られているシミュレータに付属している公差解析では統計的な手段が取られます。(例:サイバネットのページより, 光学シミュレータソフトOSLO)
このような統計解析では公差の確率分布を定めて,分布に従った数値を生成します。
確率分布に従う数値を生成する方法として,ラテン超方格法やモンテカルロ法があります。
これらは多次元データからのデータサンプリングの手法で,最適化などでよく使われています。それぞれの特徴は,
- ラテン超方格法: どの列・行をとっても同じ数値が現れるように取る。ラテン方格をn次元に拡張したもの。参考Latin hypercube sampling
- モンテカルロ法: それぞれの確率分布を完全にランダムに生成する方法
があります。前者は少し頭を使ってデータを選んでいて,後者のほうが力技で想像しやすいかと思います。
これらを利用して何千・何百と繰り返し計算を行って故障率を計算するのが,統計的な手法となります。
とは言え,これら2つの方法は,公差のばらつきの範囲のパラメータを虱潰しにすべて検証して,問題ある・なしを判別するため,設計空間が大きくなればなるほど計算コストが莫大になることが想像できます。
そこで,計算のコストを削減する,という目的で導入されたのがFirst Order Reliability Method( FORM )になります。
前置きが長くなりましたが,ここからがFORMでの計算方法となります。今後は,こちらのノートの和訳を掲載していきます。英語が読める方はそちらを読めばいいかと思います。